まどろみ研究室.

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記憶が書き換わる?脳科学の最新知見を学ぼう

人の脳ってホント不思議ですよね。今日は、私たちの大切な"記憶"が脳の中でどのように作られ、保存されているのかをご紹介します。

記憶はやっぱり脳の中

「記憶」は身体のどこに保存されているのでしょうか。「肝臓だ」「心臓だ」「いやアソコだ」などと長年議論されてきました。

ところが1950年代、カナダの医師が実験でひとつの発見をしました。てんかん患者さんの脳に電気刺激を与えたところ、その人が昔の出来事を鮮やかに思い出したんです。

この現象の発見から、記憶は脳の中に蓄えられていることが分かったのです。では脳は、どのように記憶を蓄えるのでしょう。

脳の中の「万手観音ネットワーク」

私たちの脳は、約1千億個の神経細胞(ニューロン)がネットワークを作っています。この神経細胞を、手が1万本位ある観音様に喩えましょう。千手観音ならぬ「万手観音」です。

別に観音様じゃなくても構いません。ミニオンでも何でも、お好きな何かに無数の腕が生えている様子を想像してください。

さて、この観音様の腕は樹木の枝のように伸びています。そして1千億体の観音同士が手を繋ぎあって、電気信号でやり取りする観音ネットワークを構築しています。

一千兆個ものシナプスが「心」をつくる

そして観音様同士が手を繋いでいる部分を「シナプス」と呼びます。繋いだ手のひらの間には隙間があって、そこを神経伝達物質が行き来しています。ヒトの脳内にはなんと一千兆個ものシナプスがある、と推測されています。

これはさながら、荘厳な立体曼荼羅ですね。それがあなたの頭蓋の中に収まって活動しているんです。そして記憶や感情などの、高次の脳機能を生み出しているわけです。なんか不思議な気分ですよね。

記憶をつくる、思い出す仕組み

では「記憶」はどんな風に作られ、保持されるのでしょうか。

まず特定の万手観音(ニューロン)が集まって手を繋ぎ合い、ひとつのグループを作ります。このグループが一つの記憶を形成しているのです。

そして、みなさんが記憶を呼び起こすとき、その観音グループのメンバー達が目をカッと見開いて、一斉に活性化するんですよ。

記憶を固定する"接着剤"

記憶には一時的な"短期記憶"と長く残る"長期記憶"の2種類があります。

長期記憶を作るには、観音様同士の繋いだ手をしっかりと固定する「接着剤」役のタンパク質が必要です。

例えば、CREB、BDNF、Synapsinなどの特殊なタンパク質です。これらのタンパク質が、観音様の手をしっかりと繋ぎ、記憶をしっかり固定化するわけです。

繋いだ手をボンドで固める、または半田付けしちゃうイメージですね。

思い出された記憶は不安定化する

面白いことに、私たちが過去のことを思い出す際、一旦観音様の手を固定していた「接着剤」のタンパク質が外れて、記憶が不安定になります。

しかし、すぐに新しい「接着剤」タンパク質が生成され、観音様の手同士が再びしっかりと固定されます。

この時、思い出した記憶が新しい情報と合わさって強化・更新されることもあります。つまり、観音様の手を一部繋ぎ変えて、再固定化するイメージです。

このように記憶が一時的に不安定化した状態で、新たな情報を与えたりして記憶を変化させることで、トラウマ治療ができることを発見したのが、フランスの心理学者ピエール・ジャネなのでした。

繰り返し思い出すと嫌な記憶が薄まる?

怖いと感じた場所や経験の記憶は、何度も思い出すことで薄れていくことがあります。それを"消去学習"と言います。例えば、怖かった公園に何度も行くことで、そこへの恐怖が徐々に和らいでいく様な現象です。

この時も、脳の中でタンパク質が作用し、観音様の手を繋ぎ替えるようにして、記憶が書き換えられます。

まとめ

記憶と脳の関係には、まだまだ解明されていない部分が多くあります。でも、研究が進めば新たな可能性が広がっていくことでしょう。

こうした脳科学の知見を活用すれば、効率的な勉強法や、ストレスやトラウマの解消法を見つけられるかもしれません。

ではまた!