入社二年目のYさんからの相談。彼女は朝の通勤時、満員電車に乗ると気持ちが悪くなり、心臓がバクバクして冷や汗が出てしまうとのこと。最悪の場合、吐いてしまうこともあるそうです。
彼女はイメージ療法の本を参考にしてイメージワークを試しているものの、あまり効果が感じられないと悩んでいました。まずは面談で詳しく話を聞くことに。
強い義務感が「気持ち悪さ」の原因?
なんとYさん、帰りの電車も同じくらい混んでいるのに、それは平気だと言うんです。なぜ朝だけが辛いんでしょう。そこを一緒に検証していきました。
まず周辺事情をききます。次に、朝起きてから電車に乗って、会社に着くまでの様子を、頭の中で再現して語ってもらいました。
彼女の乗る宇都宮線というのは、一区間がかなり長く、しかも時々途中で止まるそうなんです。そして満員の車中で時計を見たりしていると、 「遅刻したらどうしよう、チームに迷惑がかかる、評価も下がる」そんな思考が頭を駆け巡り始める。
やがて心臓がバクバクしてきて汗が出て、胃が気持ち悪くなると言います。言いながら、彼女の表情がゆがみます。一旦ミラーニューロンをOFFにしたい。油断するとこっちまで気持ち悪くなりそう。
どうもYさんは、人一倍、責任感や義務感が強いようなんですよね。確かに普段の仕事ぶりからも、それは十分うかがえます。この強い義務感が、気持ち悪くなる原因のように思われました。
「降りたいから降りる!」不要な義務感から自由になる。
Yさんに、本当はどう行動したいか聞いてみると、「すぐ降りたいです!」と即答。「でも遅刻しちゃうから」と煮え切らない感じです。
そこで、ぼくはこう言いました。「では気持ち悪くなりそうな兆候が見えたら、迷わず電車を降りましょう。そしてすぐ会社に電話して『今通勤中に電車内で気持ち悪くなり、駅で休んでいます』と伝えましょう」と。
「(降りて)良いんでしょうか?」と怪訝そうな顔の彼女。「這ってでも来いって言う昭和全開な人いるかな?」と続けると「いないです」との返答。
「でもチームに迷惑がかかるんじゃないか」と心配していたので、「迷惑だと感じそうな人いる?」と再度確認すると「いません」と答えました。
「クビになる?」「なりません」など、冗談を交えながら、そんなやりとりが続きます。やがて彼女は笑いながら「分かりました」と。新しい考え方を受け入れたようです。アホな我慢大会なんて、参加しなくて良いんだよ。
実際にイメージ・ワークしてみる。
さらに、彼女に想像の中で、会社に電話をかけてもらいました。そして、電話を受けた先輩や他のメンバーが彼女のことを、すごく心配している様子をイメージしてもらいました。そして出社すると、彼女が温かく迎えられている様子をイメージしてもらったのです。
Yさんはイメージしながら涙ぐんでいました。
いちばん大事なのは、自分の心とカラダでしょ。
ぼくは「電車からはさっさと降りて、会社に電話で一報を入れたら、あとは心おきなく駅で休むように」と改めてお願いしました。
そして、自分のカラダの大切さを思い出し、自信をもって行動するようにと強調して、面談を終わりました。1時間ちょっと位、かかったと思います。
その後のYさん
その後、Yさんは二週間連続して、一度も途中下車せずに会社まで来れたそうです。彼女は目を輝かせ「イメージワークってすごいんですね!」と報告してくれました。 ぼくも誇らしい気持ちになり、満面のドヤ顔で応じます。すると彼女は、
「本に書いてあるとおりにイメージワークをやったら、大丈夫になったんですー!」
って、そっちかーい!
今度その本を、ぼくにも貸してくれるんだって。ありがとね。
このアホな我慢大会から、おたがい早く本当の卒業をしたいね。
ねむヨシでした。